
湿原に広がるワタスゲと大日連山
なだらかな溶岩台地の上に広がる「立山弥陀ヶ原・大日平」は、標高1,040〜2,120mと、国内の条約湿地では最も高いところに位置しています。
「弥陀ヶ原・大日平」は、雪解け水でできる雪田草原であり、1年の約半分が深い雪に覆われています。「ガキ(餓鬼)田」と呼ばれる池塘(小さな池)が点在し、独特の景観が広がります。
雪解け水は、落差日本一(350m)を誇る「称名滝」となって流れ落ち、立山の美味しいお米を育むなど、生活を潤す水資源になっています。
写真:落差日本一の称名滝(左)と水量が多いときにのみ現れるハンノキ滝(右)
立山は、富士山、白山と並ぶ日本三霊山の一つです。かつては修験者のみが登ることを許されていた、山岳信仰の中心地でした。そのため、山岳信仰に由来する名前が多く残っています。
例えば、「ガキ田」は、池塘に生えるミヤマホタルイを稲に見立て、地獄に堕ちた餓鬼が飢えをしのぐために田植えをした場所として、「称名滝」は、滝の音が「南無阿弥陀仏」と称名念仏を唱えているように聴こえるとして命名されたと言われています。
夕陽に照らされた雲海の神秘的な光景
立山弥陀ヶ原・大日平が広がる「立山黒部アルペンルート」は、国内外から年間約100万人が訪れる国際山岳観光地です。
そのため、多くの観光客を魅了する立山の豊かな自然を次代に守り伝えることが大切です。ハイブリッドバスの導入やマイカー規制による排気ガスの低減、外来植物の除去作業や植生復元による動植物の保護などにより、観光と環境との調和を図る取り組みが行われています。
写真:秋の青空を映す池塘
湿地及びそこに生息・生育する動植物の「保全」と湿地の恵みを活かして利用する「ワイズユース(賢明な利用)」を目的とする国際条約です。正式名称は「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」といい、1971年にイランのラムサールで締結されたことから「ラムサール条約」と呼ばれています。
湿地は、さまざまな動植物の生息地であり、私たちの暮らしを支えている貴重な資源です。 「立山弥陀ヶ原・大日平」は、ラムサール条約第11回締約国会議で条約湿地に登録され、国内の条約湿地は46ヵ所となりました。
(2012年7月現在)
新雪輝く11月の弥陀ヶ原
弥陀ヶ原・大日平は高山植物の宝庫です。夏には可憐な高山植物が咲き誇り、秋には鮮やかな紅葉が彩ります。
弥陀ヶ原には、内回り・外回りの遊歩道コースがあり、北に大日連山の勇姿を眺めながら、広大な湿原を気軽に散策できます。
大日平へは、称名滝付近の大日岳登山口から登山道を約3時間登ると到着します。急な坂を登った先には、壮大で美しい景色が広がっています。また、大日平−室堂間の縦走ルートもあります。
写真(上):大日岳とふもとに広がる大日平
写真(下):池塘(ガキ田)は長い年月をかけて発生、成長、消滅を繰り返す
氷河時代から生息するといわれるライチョウ(国の特別天然記念物)